2021年 10月 21日
兼基のスターハウスマンション |
スターハウスの話をラジオで披露したところ、近代建築ウォッチング仲間が、ここにもスターハウスがあるよ、と情報を寄せてくれました。
また、標準型スターハウスでは、3戸(3列)とも、それぞれ突き出した前面がベランダ(主要な開口部)になっていますが、このマンションの場合、中央の1戸(1列)は定石通り突き出た前面がベランダだけど、両脇の2戸(2列)は側面にベランダを設けています。つまり全戸南向きにしているわけです。
岡山市中区兼基のマンションです。ホームセンター「タイム」の近く。この辺は以前からわりと行ったり通ったりするエリアですが、全然気付いていませんでした。さっそくストリートビューで確認すると、確かにそれっぽい。しかも、これまで公営住宅で見たスターハウスより建物の規模が大きそう。我が家からもそう遠くない場所ですし、これはすぐに行かなくては!と出動しました。
で、行ってみると、ストビュー(2019年9月撮影)で見たのより、ずっとカラフルで可愛い外観! 最近、外壁塗装したのでしょうか。古いマンションのようですが、こういう修繕もアリですね。
「谷口第1マンション」という名称の6階建て集合住宅です。調べてみると、建てられたのは1974年らしい(住宅情報で検索すると様々な築年月が出てきますが、国土地理院の航空写真から1974年が正しいと判断しました)。スターハウスとしてはだいぶ後の時代ですね。スターハウスが公営住宅で盛んに造られたのは1950年代後半から1960年代前半で、その後はパタリと造られなくなりますが、民間の集合住宅では採用されることも時々あったようです。
よくあるスターハウスは、三方に突き出た部分はほぼ均等な角度(120度に近い角度)を成していますが、こちらは「凸」字に近い形で、裏面(出入口のある面)の角度が広く、その分、反対側の2角は直角に近い角度になっています。偏った3足スター形というか…。
【追記】これまで撮ったスターハウスの写真をよくよく見返してみたら、すべて全戸ほぼ南向きでした。つまり、中央の真南向き住戸は突出部外側開口部にベランダを設け、その両側の住戸は、20度ほど斜め外向きにはなるものの、側面にベランダを設けてなるべく南向きになるようにしています。この兼基のスターハウスは、出入口のある北面の角度を極端に広く取っているため、両脇の住戸側面が真南より10度ほどしか傾いていないので、より全戸南向きの印象が強いという感じです。
全戸南向きを目指すなら、普通に各戸が一列に並んだ四角い建物にすればいいのに、わざわざ凹凸を付けたのは、できるだけ外に面する壁を多くとって窓や排気口に充てたかったからでしょうか。カラフルに塗られた縦長かまぼこ型の壁龕は、元々は給湯器を設置するスペース(つまり排気口が必要な部分)のようです。
各戸が並列する四角い集合住宅だと、裏側いっぱいに外廊下を通す形になりますが、このマンションは、中央の飛び出た列の後ろ側にある台形のスペースを廊下や階段・エレベーターにあてているらしく(2つ下の航空写真を参考にしてください)、いわば内廊下スタイルになっています。無駄に長い廊下を作らずに済み、両脇の各戸は裏側にしっかり窓を設けることができますね(外廊下に面した中途半端な窓ではなく)。
この「谷口第1マンション」は、東隣に「谷口第2マンション」(1980年築)、北隣に「谷口第3ビル」(1985年築)が建っています。いずれも集合住宅で、おそらく同じオーナー(建設会社?)がこの順番で建てていったのでしょう。「第1」が変形スターハウス、「第3」が普通の長四角形マンション(南面に各戸ベランダが並び、北面に外廊下が通るタイプ)で、その中間の「第2」は、各階2戸ずつの四角い棟2棟が中央に階段スペースを挟む形で連結している、というこれまた変わった形です。
↓ 兼基の谷口マンション群。グーグルマップの航空写真より。
最初はいろいろ考えて凝った形にしたのでしょうが、試行錯誤しながら時代と共にだんだんシンプルになっていった、という過程が、この3つのマンションから見えてきます。今やもうマンションといえば、第3のシンプル型が普通ですからね。
しかし、岡山のマンション黎明期だった1974年当時は、マンションの定型がまだ定まっていなくて、ただのマッチ箱型では味気ないし、もっといい形があるのではないか、などとあれこれ考えて設計していたのかもしれませんね。
実際、同じ岡山市中区にある同時期建設のマンションには、複雑な形をしたものが見られます。住吉ビル(1973年築)、プレジデント後楽園(1974年築)など。どちらも内廊下スタイルのマンションです。航空写真で見るとレゴブロックみたい。凝っていて面白いけれど、複雑にするとそれだけ建設費がかさむので、こういうのは廃れてだんだんシンプルになっていったのでしょう。
ただし、これらの近くにある同時期のマンションでも、「メゾン操山」(1973年築、中区国富)や「ファミール岡山」(1976年築、中区浜)などは、外廊下・各戸並列タイプですので、こういうスタイルが岡山のマンション業界で知られていなかったわけではなさそうです。敷地の関係かもしれませんが、この二つはやや角度の広いL字型の建物配置。これは偶然なのか、流行りなのか。
昭和後半という比較的新しい時代の建物であるマンションも、注目してみるといろいろ面白い点が見えてきて、興味を掻き立てられました。
by machiarukinote
| 2021-10-21 21:09
| 街歩きレポート
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