2019年 07月 04日
玉野市の幽山仙境 ~早瀧自然公園~ |
『おかやま街歩きノオト』次号のための取材にやっと重い腰を上げました。10月半ばの『イチョウ並木の本まつり』でお披露目できるよう頑張ります!
まず手始めに、玉野市滝の正蔵院を訪問。あまり交通便利な場所ではありませんが、岡山中心部から国道30号線・秀天橋経由の渋川行き路線バスがそこそこの本数出ているので、それを使って・・・。バス停からは少し距離があるけれど、歩けないほどではないし。
せっかくはるばる来たのだから、取材だけでなく、他も見て歩こうと考え、事前に下調べしてみると、近くに「早瀧比咩神社」というお宮があるとのこと。玉野市の史跡ガイドなどで聞いたことのある神社です。よし!ここも見ようと決め、さらに調べると、どうもこの神社の脇を流れる渓谷沿いに神社の末社が点在し、滝や○○岩などのプチ名所もあるらしく、ちょっとしたハイキングコースになっているようです。渓谷の途中には「蒼穹珈琲 blue coffee」という隠れ家的なお洒落カフェもあるとか。ただし、私が訪問を決めたこの日はたまたまカフェの店休日だった(涙)。先に分かっていたら、カフェの営業日に合わせたのに・・・。
それでも、とにかく行ってみたところ、これが予想外に面白いスポットでした。しかも超ラッキーなめぐり合わせ。取材とは関係のないオマケ部分ゆえ、『街歩きノオト』に載せることはないと思いますので、代わりにここでレポートしておきますね。
これ(↓)が、早瀧比咩神社と自然公園(ハイキングコース)の入口部分。
左が神社参道で、この突き当りに社殿があります。右にちらっと写っているのが一般道(県道)で、これが渓谷沿いの道です。県道とはいえ、車一台がやっと通れるような細い道ではありますが。
これ(↓)が早瀧比咩神社の拝殿正面の姿。比較的最近修理したのか、屋根瓦や軒回りの部材はピカピカ。
拝殿前の古びた玉乗り狛犬が趣きあります。台座を見たら、文久三年(1863年)って刻まれていました。幕末ですね。江戸前期・元禄の建物だという本殿は、拝殿背後の、かなり高い石垣の上に建っています。
当社は、児島半島の新熊野信仰(林の熊野神社や五流尊瀧院、由加の蓮台寺や由加神社)に関連した古社と考えられており、瀬織津姫らを祀っています。瀬織津姫は川(水)や浄めを司る女神で、渓谷沿いのこの地にぴったり!
山陰のしっとりした空気感ただよう境内には、このような(↓)池を備えた小庭園コーナーも造られており、水の女神の神域にふさわしい雰囲気です。
また、入口の鳥居をくぐってすぐの所には、「龍岩」と書かれた説明板が立っていて、苔むした大きな岩が鎮座していました。信仰の対象だったと思われる巨石だとのこと。このエリアはどうも岩と水がテーマ(?)のようです。
神社の境内は県道と並行するように細長く伸びているので、拝殿などのすぐ横から直接、道に出ることもできます。そうやって県道に出ると、ちょうど目の前に赤い小橋があり、渓谷対岸の素戔嗚神社(早瀧比咩神社の末社)へと通じています。石段を上って神社へ。
神社(といっても小さな祠ですが)を護るのは一対の備前焼狛犬。狛犬はそれぞれ金網で囲われています。説明板によると、江戸後期の備前焼の名工・木村直左右衛門による名品だそう。昨今続発する備前焼狛犬盗難事件を鑑みて、最近金網で対策したようです。
県道に戻って先に進むと、道端に「二の滝」「三の滝」と書かれた看板が・・・。その脇に川へおりる小道があり、飛び石伝いに対岸にも渡れるようになっています。が、川の様子はこんな感じで、大きな石がゴロゴロしている間を水が階段状に流れており、どれが「二の滝」「三の滝」なのやら。
説明文によると、昔はもっと落差のある目立つ滝だったけれど、江戸時代後期に大水で岩が崩れ、現在のような状態になったのだとか。大きな滝を期待してい行くと当てが外れますが、これはこれで面白い景観です。岩の隙間のあちこちから流れ出てくる水を探し、その様々な表情を眺めるのも一興です。
下の写真は、川中に横たわる人工物のような大岩(古墳石室みたい!)。この下を水が潜っているようです。画面右端では、植物伝いに玉すだれ状に水がしたたっています。
なお、写真に収め損ないましたが、ここで対岸に渡った先には、こじんまりとした養蜂場があります。整然と並んだ巣箱と作業小屋が見えました。この辺りで渓谷の写真を撮ろうとすると、レンズにミツバチが寄ってきて少々煩わしかったです。ミツバチなので、よほど刺激しなければ刺される恐れはないと思いますが。
また県道に戻り、ヘアピンカーブの急坂を登って少し進むと、現れたのは「天狗の足跡」なる看板と大岩。山側の道端です。説明板によると、その昔ここを通りかかった天狗が、渓谷の絶景に見とれてしばし立ち止まった所だそう。足跡状の痕跡でもあるのかと見回してみましたが、大岩は植物に覆われて全貌が見渡せません。よく見ると、大岩の脇の山肌に石段が設けられており、上に上れるようになっているようです。が、石段の先を塞ぐ柵が見え、なんだか荒れた感じだったので、登るのはやめました。岩の上部にでも「足跡」があるのでしょうか。もし登るのなら、植物の少ない冬場がいいでしょうね。
それから、素戔嗚神社と二の滝・三の滝の中間くらいに、「恵比寿・大黒岩」という説明板も立っていました。渓谷向こう側の背後に見える山の中腹(頂上に近い所)にむき出しの奇岩が連なった部分があり、そのことを指しているようです。ちょうど、王子が岳みたいな・・・。ひときわ大きな岩が笑っているように見えるのだそうですが、よく分かりませんでした。季節柄、道沿いに繁る木々が邪魔になり、透かし見るような状況だったこともあって・・・。こちらも見るなら冬場がいいかも。
「天狗の足跡」の少し先、川側に「龍王宮」「一の滝」「髪すき岩」の説明板が立っており、そのそばに川へ降りて行く小道が見えたので、それをたどります。ここにも赤い小橋が架かっていて、これで対岸の竜王宮へ。竜王宮も早瀧比咩神社の末社で、行ってみると、覆い屋の中に古びた石祠が祀られていました。余談ですが、祠のそばの岩の上に、小さなトカゲがいて、私がここの境内で写真を撮ったり周りを眺めている間じゅう、ずっと逃げずに(時々ちょろっと動くだけで)とどまっていました。竜王様の使いかな。
竜王宮の小さな境内はそのまま大岩の上のような状態で、そこから見下ろす渓谷は結構スリリング。
下の写真は小橋で上流側を撮ったものですが、これが一の滝なのかは不明。説明板には、大水で崩れる前は落差10mあった、と書かれています。
下流側にも、これまた巨大な苔むした一枚岩が横たわっており、不思議な光景。
説明板にある「髪すき岩」は、上流側の県道沿いにある背の高い巨岩です。てっぺんに風向計が設置されているのが目印。この岩の上には県道伝いに上ることができます。上るといっても、県道とほぼ同じ高さで上が平らになっているため、簡単です。とはいえ、川を見下ろす縁に近づくのは緊張しますが・・・。髪すき岩のいわれは、その昔、近在の乙女がこの岩の上で一の滝の清流を水鏡に髪をすき整えたというもの。この岩の上から、上流側対岸を見やると、直角に切り立った崖が連なり壮観です。和風ローレライ伝説の地、といったところかな。
この髪すき岩の上流側すぐ隣には、このような(↓)洒落た洋風の建物が掛け造りのような状態で建っています。これが「蒼穹珈琲 blue coffee」。
定休日を示す準備中の札を横目に見ながら、気を取り直して先へ。このすぐ先にはコンクリートの橋が架かっていて、ここで渓流と県道はクロスします。これまで道の右側を流れていた川はここから道の左へ。その前に、川のたもとに立つ「熊蔵橋」の説明板に気付き、その説明に従って橋の下(下流側)を覘くと、こんな素朴な石橋が・・・。
その昔、熊蔵という大変な力持ちが一枚岩を運んで一人で掛けた橋、ということです。
一方、現代の熊蔵橋のたもとには、「はちみつ直売処」と書かれた看板と藁ぶき屋根の風流な小屋。
直売処というわりには、開店しているような気配もなかったので、とりあえず先に進みました。
熊蔵橋の上流側も相変わらず、巨岩ゴロゴロ。
橋を渡った先には、道沿い川側に数軒の民家が連なっています。一番上流の民家のところで、カーブミラーが屋根(ひさし)を突き抜けている光景を見付け撮影。
その民家の先には、こんな(↓)石の道標が立っており、ちょっと離れた所に説明板も設置されています。
説明によると、由加山への道標とのこと。「二十三丁」というのは、由加山まであと23丁(約2.5キロメートル)という意味ですね。江戸時代後期、日比港から由加山へ参詣するルート(日比往来)が整備され、道筋1丁ごとに道標が置かれたのだとか。そのうち15本が現存しており、この渓谷沿いは比較的よく残っているそうです。二十三丁の手前には二十四丁の道標がありましたし。
日比港に元標(第1本目の道標)があるという説明を読んで、思い出しました。以前、『街歩きノオト』第13号の取材で日比に行った時(2011年9月)に撮ったやつ。これですね!
下のほうはちょっと埋まっていますが、「これより由加山へ九十六丁」と刻まれているらしい。側面の年号は弘化四年(1847年)ですね。96丁って10km余り! 昔の人は健脚だったんだなぁ。由加山詣りには日比からのルートだけでなく、秀天橋(JR常山駅近く)や八浜からのルートもあって(どちらも児島湾干拓以前は海港だった)、こっちから来るルートもこの渓谷沿いの道に合流したそうです。この部分はかなりメインの参詣道だったんですね。
熊野神社・五流尊瀧院がある林や木見のほうから歩いていく古い参詣道もあるとは聞いていましたが、現代人の感覚で言えば、由加山へ向かうのなら琴浦や上の町のほうからというイメージだったので、これは意外でした。早瀧比咩神社の入口の鳥居の所から、二十三丁の道標までは約500m。あと2.5kmなら、結構歩けそうですね。プラス1時間ちょっとくらいかな。ここまでも勾配はそんなにきつくなかったし、この先も地図で見るとわりとなだらかな整備された道のようなので、春や秋のような気候のいい季節なら楽勝かも。バス路線がほとんどない由加山はまだ訪れたことなく、どうにか自力で歩いて行けないかと色々考えたことがあるのですが、滝経由のルートがいいかも、と思いつきました。別の季節に出直すつもりです。
今回の探索はこの辺まででいいかなという気分でしたが、二十三丁の道標の先に川へと緩やかに降りる小道が見えたので、これをちょっとたどってみました。河原に降りた所で上流を見やると、こんな感じの風景(↓)。
流れの上流側奥は湾曲しているらしく見通せませんでしたが、地図によると、わりと大きな堰止湖(溜め池?)がそのすぐ先にあるはずです。が、きりがないのでここで引き返しました。舗装された県道に戻り、同じ道を逆に歩いていくと、先ほどの「はちみつ直売処」に人が・・・。直売処の人らしき年配の男性と、車で訪れたらしいマダム2人が立ち話しています。はちみつに未練があったので、男性に「はちみつは買えますか」と声を掛けると、「販売はしているけれど、置いているのはあっちなんだよね」とカフェを指差します。そうか、今日はカフェは休みだしな・・・とガッカリすると、マダムたちが「少し待ったら、開けてくれるわよ」と言います。この女性たちは常連さんだそうで、直売処のおじさんともカフェ店主とも親しく、店休日だけれども開けてもらう約束で来訪したらしい。
せっかくなので、一緒に待たせてもらいました。かやぶき屋根の小屋の向こうには、山からの清らかな沢水を引いた風流な庭が広がっており、せせらぎや風鈴の音も心地よい。結構長く待ちましたが、思いがけずまったりした心洗われるひと時でした。
かやぶき屋根の小屋は一見茶室風ですが、実際はおじさんの居間で、テレビや冷蔵庫も完備。庭や小屋はおじさんが自らコツコツと造り上げたもののようです。この方は20年余り前からここで養蜂業を営んでいるのだそう(一の滝養蜂園)。お洒落なカフェの建物も、実はこの男性の持ち物。元々ここに住むつもりで(別荘のような感じで)建てさせたものだそうです。カフェの店主は息子さんなのかな、と想像していたら、そうではなく、この方に惚れ込んで弟子入りした人なのだとか。現在、養蜂の後継者として見習いで働く傍ら、建物を借りてカフェも営んでいるというわけです。
だいぶ待たされたのも、養蜂作業中だったから。この季節は一番忙しい時なのだとか。渓谷の途中にあった養蜂場のほかに、少し離れた所にももう一ヶ所養蜂場を持っているそうです。ちなみに、養蜂園オーナーもカフェ店主もここに住んでいるわけではなく、通いなのだとか。カフェ店主の自宅は岡山市とはいえ比較的近くとのことですが、養蜂園オーナーの自宅はなんと中区。ウチの近所でした! ほぼ毎日通っているなんてスゴイ!と驚きましたが、車だと小一時間くらいのようです。聞けばマダムたちも岡山市内から来られたとのこと。運転手役の方はこれまた中区の住人でした。私にとっては気合を入れないと来れない旅行気分の土地でも、車を運転する人にとっては日常的にひとっ走りできる距離なんでしょうね。
ようやくカフェ店主が戻ってこられて、カフェ店内に入れることになりました。コーヒーやケーキも用意できるとのことで、せっかくなのでいただくことに・・・。店内からは渓谷の絶景がバッチリ。「髪すき岩」から見えた、直角に切り立つ崖がちょうど目の前です。窓の外のベランダに出て眺めることもできます。
さらに驚いたことには、窓辺の置かれた木の実(かな?)の器に、何度も野鳥(ヤマガラ)がやって来てはついばんでいくのです。可愛い声で鳴きながら・・・。私たちが座っているすぐ近くなのに。なに、この桃源郷のような環境!
自家焙煎のコーヒーはこだわりの淹れ方なのだそうで、温度計で測った適温の湯(熱すぎない湯)をまさに一滴ずつたらすという丁寧な職人技。
飲み物には自家製はちみつをかけたクリームチーズ一切れもデフォで添えられています。とっても濃厚なはちみつ! コーヒーもガトーショコラも、濃厚だけどしつこくなくて(雑味がない?)美味しゅうございました。もちろん、目当てのはちみつも購入しましたよ。300g入りで1100円。2000円の大びんもありますが、重いので小瓶のほうを・・・。はちみつの種類は季節によって変わるそうで、今はフクラシ(ソヨゴ)の蜜。濃厚なタイプだとか。
あと、「蜜釜塩」という蜂蜜釜焚塩も珍しかったので購入。先ほど、わらぶき小屋のところで待機していた時に、耐火煉瓦造りのかまどみたいなものが目に入ったので、ピザでも焼くのかな、と思い、「何か調理されるんですか」と聞いてみたら、海水を運んできて煮詰めて塩を作るとのこと。海辺でもないのに、わざわざ?と不思議に思っていたのです。それがこの製品だったのですね。玉野の海からきれいな海水を汲んできて、自家製はちみつを加え、釜焚きで作った塩と説明されています。甘さはそれほど強くなく、後味にほんのりはちみつの風味が感じられる塩だそう。
その他に、林の熊野神社と福祉作業所と地元アーティストがコラボした手作り石鹸も販売されていました。熊野神社にちなんだアートなイラストのパッケージが目を引きます。カフェ店主さんは書道家という一面も持っておられ、店内をアートの展示に提供するなど、地域の芸術活動にも寄与されているそうです。今年春には「モンカーダこじま芸術祭2019」の会場の一つにもなったとか。え、それって、以前、林の熊野神社も展示会場として参加していたイベントじゃない? と思っていたら、二人組女性の一人(中区住人ではないほうの方)が、「うちのギャラリーもその一環でモンカーダさんの作品展示をしたのよ」と・・・。この方は、岡山市南区泉田の「茶房&ギャラリー 遠音」のオーナーだったのです。
私自身はその芸術祭を見たことはないのですが、熊野神社宮司さんを通して話はよく聞いていました。なんか不思議なご縁・・・。
というわけで、素晴らしい自然を満喫し、ひょんなことから素敵な人たちにも出遭うことができ、大満足の早瀧自然公園訪問でした。なんだか、桃源郷のような別天地にしばし遊んだような気分。さらに帰路は、二人組女性の車に同乗させていただき送ってもらうというオマケまで・・・。皆さん、本当にありがとうございました。
まず手始めに、玉野市滝の正蔵院を訪問。あまり交通便利な場所ではありませんが、岡山中心部から国道30号線・秀天橋経由の渋川行き路線バスがそこそこの本数出ているので、それを使って・・・。バス停からは少し距離があるけれど、歩けないほどではないし。
せっかくはるばる来たのだから、取材だけでなく、他も見て歩こうと考え、事前に下調べしてみると、近くに「早瀧比咩神社」というお宮があるとのこと。玉野市の史跡ガイドなどで聞いたことのある神社です。よし!ここも見ようと決め、さらに調べると、どうもこの神社の脇を流れる渓谷沿いに神社の末社が点在し、滝や○○岩などのプチ名所もあるらしく、ちょっとしたハイキングコースになっているようです。渓谷の途中には「蒼穹珈琲 blue coffee」という隠れ家的なお洒落カフェもあるとか。ただし、私が訪問を決めたこの日はたまたまカフェの店休日だった(涙)。先に分かっていたら、カフェの営業日に合わせたのに・・・。
それでも、とにかく行ってみたところ、これが予想外に面白いスポットでした。しかも超ラッキーなめぐり合わせ。取材とは関係のないオマケ部分ゆえ、『街歩きノオト』に載せることはないと思いますので、代わりにここでレポートしておきますね。
これ(↓)が、早瀧比咩神社と自然公園(ハイキングコース)の入口部分。

左が神社参道で、この突き当りに社殿があります。右にちらっと写っているのが一般道(県道)で、これが渓谷沿いの道です。県道とはいえ、車一台がやっと通れるような細い道ではありますが。
これ(↓)が早瀧比咩神社の拝殿正面の姿。比較的最近修理したのか、屋根瓦や軒回りの部材はピカピカ。

拝殿前の古びた玉乗り狛犬が趣きあります。台座を見たら、文久三年(1863年)って刻まれていました。幕末ですね。江戸前期・元禄の建物だという本殿は、拝殿背後の、かなり高い石垣の上に建っています。

当社は、児島半島の新熊野信仰(林の熊野神社や五流尊瀧院、由加の蓮台寺や由加神社)に関連した古社と考えられており、瀬織津姫らを祀っています。瀬織津姫は川(水)や浄めを司る女神で、渓谷沿いのこの地にぴったり!
山陰のしっとりした空気感ただよう境内には、このような(↓)池を備えた小庭園コーナーも造られており、水の女神の神域にふさわしい雰囲気です。

また、入口の鳥居をくぐってすぐの所には、「龍岩」と書かれた説明板が立っていて、苔むした大きな岩が鎮座していました。信仰の対象だったと思われる巨石だとのこと。このエリアはどうも岩と水がテーマ(?)のようです。
神社の境内は県道と並行するように細長く伸びているので、拝殿などのすぐ横から直接、道に出ることもできます。そうやって県道に出ると、ちょうど目の前に赤い小橋があり、渓谷対岸の素戔嗚神社(早瀧比咩神社の末社)へと通じています。石段を上って神社へ。

神社(といっても小さな祠ですが)を護るのは一対の備前焼狛犬。狛犬はそれぞれ金網で囲われています。説明板によると、江戸後期の備前焼の名工・木村直左右衛門による名品だそう。昨今続発する備前焼狛犬盗難事件を鑑みて、最近金網で対策したようです。

県道に戻って先に進むと、道端に「二の滝」「三の滝」と書かれた看板が・・・。その脇に川へおりる小道があり、飛び石伝いに対岸にも渡れるようになっています。が、川の様子はこんな感じで、大きな石がゴロゴロしている間を水が階段状に流れており、どれが「二の滝」「三の滝」なのやら。

説明文によると、昔はもっと落差のある目立つ滝だったけれど、江戸時代後期に大水で岩が崩れ、現在のような状態になったのだとか。大きな滝を期待してい行くと当てが外れますが、これはこれで面白い景観です。岩の隙間のあちこちから流れ出てくる水を探し、その様々な表情を眺めるのも一興です。
下の写真は、川中に横たわる人工物のような大岩(古墳石室みたい!)。この下を水が潜っているようです。画面右端では、植物伝いに玉すだれ状に水がしたたっています。

なお、写真に収め損ないましたが、ここで対岸に渡った先には、こじんまりとした養蜂場があります。整然と並んだ巣箱と作業小屋が見えました。この辺りで渓谷の写真を撮ろうとすると、レンズにミツバチが寄ってきて少々煩わしかったです。ミツバチなので、よほど刺激しなければ刺される恐れはないと思いますが。
また県道に戻り、ヘアピンカーブの急坂を登って少し進むと、現れたのは「天狗の足跡」なる看板と大岩。山側の道端です。説明板によると、その昔ここを通りかかった天狗が、渓谷の絶景に見とれてしばし立ち止まった所だそう。足跡状の痕跡でもあるのかと見回してみましたが、大岩は植物に覆われて全貌が見渡せません。よく見ると、大岩の脇の山肌に石段が設けられており、上に上れるようになっているようです。が、石段の先を塞ぐ柵が見え、なんだか荒れた感じだったので、登るのはやめました。岩の上部にでも「足跡」があるのでしょうか。もし登るのなら、植物の少ない冬場がいいでしょうね。
それから、素戔嗚神社と二の滝・三の滝の中間くらいに、「恵比寿・大黒岩」という説明板も立っていました。渓谷向こう側の背後に見える山の中腹(頂上に近い所)にむき出しの奇岩が連なった部分があり、そのことを指しているようです。ちょうど、王子が岳みたいな・・・。ひときわ大きな岩が笑っているように見えるのだそうですが、よく分かりませんでした。季節柄、道沿いに繁る木々が邪魔になり、透かし見るような状況だったこともあって・・・。こちらも見るなら冬場がいいかも。
「天狗の足跡」の少し先、川側に「龍王宮」「一の滝」「髪すき岩」の説明板が立っており、そのそばに川へ降りて行く小道が見えたので、それをたどります。ここにも赤い小橋が架かっていて、これで対岸の竜王宮へ。竜王宮も早瀧比咩神社の末社で、行ってみると、覆い屋の中に古びた石祠が祀られていました。余談ですが、祠のそばの岩の上に、小さなトカゲがいて、私がここの境内で写真を撮ったり周りを眺めている間じゅう、ずっと逃げずに(時々ちょろっと動くだけで)とどまっていました。竜王様の使いかな。

竜王宮の小さな境内はそのまま大岩の上のような状態で、そこから見下ろす渓谷は結構スリリング。

下の写真は小橋で上流側を撮ったものですが、これが一の滝なのかは不明。説明板には、大水で崩れる前は落差10mあった、と書かれています。

下流側にも、これまた巨大な苔むした一枚岩が横たわっており、不思議な光景。

説明板にある「髪すき岩」は、上流側の県道沿いにある背の高い巨岩です。てっぺんに風向計が設置されているのが目印。この岩の上には県道伝いに上ることができます。上るといっても、県道とほぼ同じ高さで上が平らになっているため、簡単です。とはいえ、川を見下ろす縁に近づくのは緊張しますが・・・。髪すき岩のいわれは、その昔、近在の乙女がこの岩の上で一の滝の清流を水鏡に髪をすき整えたというもの。この岩の上から、上流側対岸を見やると、直角に切り立った崖が連なり壮観です。和風ローレライ伝説の地、といったところかな。

この髪すき岩の上流側すぐ隣には、このような(↓)洒落た洋風の建物が掛け造りのような状態で建っています。これが「蒼穹珈琲 blue coffee」。

定休日を示す準備中の札を横目に見ながら、気を取り直して先へ。このすぐ先にはコンクリートの橋が架かっていて、ここで渓流と県道はクロスします。これまで道の右側を流れていた川はここから道の左へ。その前に、川のたもとに立つ「熊蔵橋」の説明板に気付き、その説明に従って橋の下(下流側)を覘くと、こんな素朴な石橋が・・・。

その昔、熊蔵という大変な力持ちが一枚岩を運んで一人で掛けた橋、ということです。
一方、現代の熊蔵橋のたもとには、「はちみつ直売処」と書かれた看板と藁ぶき屋根の風流な小屋。

直売処というわりには、開店しているような気配もなかったので、とりあえず先に進みました。
熊蔵橋の上流側も相変わらず、巨岩ゴロゴロ。

橋を渡った先には、道沿い川側に数軒の民家が連なっています。一番上流の民家のところで、カーブミラーが屋根(ひさし)を突き抜けている光景を見付け撮影。

その民家の先には、こんな(↓)石の道標が立っており、ちょっと離れた所に説明板も設置されています。

説明によると、由加山への道標とのこと。「二十三丁」というのは、由加山まであと23丁(約2.5キロメートル)という意味ですね。江戸時代後期、日比港から由加山へ参詣するルート(日比往来)が整備され、道筋1丁ごとに道標が置かれたのだとか。そのうち15本が現存しており、この渓谷沿いは比較的よく残っているそうです。二十三丁の手前には二十四丁の道標がありましたし。
日比港に元標(第1本目の道標)があるという説明を読んで、思い出しました。以前、『街歩きノオト』第13号の取材で日比に行った時(2011年9月)に撮ったやつ。これですね!

下のほうはちょっと埋まっていますが、「これより由加山へ九十六丁」と刻まれているらしい。側面の年号は弘化四年(1847年)ですね。96丁って10km余り! 昔の人は健脚だったんだなぁ。由加山詣りには日比からのルートだけでなく、秀天橋(JR常山駅近く)や八浜からのルートもあって(どちらも児島湾干拓以前は海港だった)、こっちから来るルートもこの渓谷沿いの道に合流したそうです。この部分はかなりメインの参詣道だったんですね。
熊野神社・五流尊瀧院がある林や木見のほうから歩いていく古い参詣道もあるとは聞いていましたが、現代人の感覚で言えば、由加山へ向かうのなら琴浦や上の町のほうからというイメージだったので、これは意外でした。早瀧比咩神社の入口の鳥居の所から、二十三丁の道標までは約500m。あと2.5kmなら、結構歩けそうですね。プラス1時間ちょっとくらいかな。ここまでも勾配はそんなにきつくなかったし、この先も地図で見るとわりとなだらかな整備された道のようなので、春や秋のような気候のいい季節なら楽勝かも。バス路線がほとんどない由加山はまだ訪れたことなく、どうにか自力で歩いて行けないかと色々考えたことがあるのですが、滝経由のルートがいいかも、と思いつきました。別の季節に出直すつもりです。
今回の探索はこの辺まででいいかなという気分でしたが、二十三丁の道標の先に川へと緩やかに降りる小道が見えたので、これをちょっとたどってみました。河原に降りた所で上流を見やると、こんな感じの風景(↓)。

流れの上流側奥は湾曲しているらしく見通せませんでしたが、地図によると、わりと大きな堰止湖(溜め池?)がそのすぐ先にあるはずです。が、きりがないのでここで引き返しました。舗装された県道に戻り、同じ道を逆に歩いていくと、先ほどの「はちみつ直売処」に人が・・・。直売処の人らしき年配の男性と、車で訪れたらしいマダム2人が立ち話しています。はちみつに未練があったので、男性に「はちみつは買えますか」と声を掛けると、「販売はしているけれど、置いているのはあっちなんだよね」とカフェを指差します。そうか、今日はカフェは休みだしな・・・とガッカリすると、マダムたちが「少し待ったら、開けてくれるわよ」と言います。この女性たちは常連さんだそうで、直売処のおじさんともカフェ店主とも親しく、店休日だけれども開けてもらう約束で来訪したらしい。
せっかくなので、一緒に待たせてもらいました。かやぶき屋根の小屋の向こうには、山からの清らかな沢水を引いた風流な庭が広がっており、せせらぎや風鈴の音も心地よい。結構長く待ちましたが、思いがけずまったりした心洗われるひと時でした。

かやぶき屋根の小屋は一見茶室風ですが、実際はおじさんの居間で、テレビや冷蔵庫も完備。庭や小屋はおじさんが自らコツコツと造り上げたもののようです。この方は20年余り前からここで養蜂業を営んでいるのだそう(一の滝養蜂園)。お洒落なカフェの建物も、実はこの男性の持ち物。元々ここに住むつもりで(別荘のような感じで)建てさせたものだそうです。カフェの店主は息子さんなのかな、と想像していたら、そうではなく、この方に惚れ込んで弟子入りした人なのだとか。現在、養蜂の後継者として見習いで働く傍ら、建物を借りてカフェも営んでいるというわけです。
だいぶ待たされたのも、養蜂作業中だったから。この季節は一番忙しい時なのだとか。渓谷の途中にあった養蜂場のほかに、少し離れた所にももう一ヶ所養蜂場を持っているそうです。ちなみに、養蜂園オーナーもカフェ店主もここに住んでいるわけではなく、通いなのだとか。カフェ店主の自宅は岡山市とはいえ比較的近くとのことですが、養蜂園オーナーの自宅はなんと中区。ウチの近所でした! ほぼ毎日通っているなんてスゴイ!と驚きましたが、車だと小一時間くらいのようです。聞けばマダムたちも岡山市内から来られたとのこと。運転手役の方はこれまた中区の住人でした。私にとっては気合を入れないと来れない旅行気分の土地でも、車を運転する人にとっては日常的にひとっ走りできる距離なんでしょうね。
ようやくカフェ店主が戻ってこられて、カフェ店内に入れることになりました。コーヒーやケーキも用意できるとのことで、せっかくなのでいただくことに・・・。店内からは渓谷の絶景がバッチリ。「髪すき岩」から見えた、直角に切り立つ崖がちょうど目の前です。窓の外のベランダに出て眺めることもできます。

さらに驚いたことには、窓辺の置かれた木の実(かな?)の器に、何度も野鳥(ヤマガラ)がやって来てはついばんでいくのです。可愛い声で鳴きながら・・・。私たちが座っているすぐ近くなのに。なに、この桃源郷のような環境!

自家焙煎のコーヒーはこだわりの淹れ方なのだそうで、温度計で測った適温の湯(熱すぎない湯)をまさに一滴ずつたらすという丁寧な職人技。

飲み物には自家製はちみつをかけたクリームチーズ一切れもデフォで添えられています。とっても濃厚なはちみつ! コーヒーもガトーショコラも、濃厚だけどしつこくなくて(雑味がない?)美味しゅうございました。もちろん、目当てのはちみつも購入しましたよ。300g入りで1100円。2000円の大びんもありますが、重いので小瓶のほうを・・・。はちみつの種類は季節によって変わるそうで、今はフクラシ(ソヨゴ)の蜜。濃厚なタイプだとか。
あと、「蜜釜塩」という蜂蜜釜焚塩も珍しかったので購入。先ほど、わらぶき小屋のところで待機していた時に、耐火煉瓦造りのかまどみたいなものが目に入ったので、ピザでも焼くのかな、と思い、「何か調理されるんですか」と聞いてみたら、海水を運んできて煮詰めて塩を作るとのこと。海辺でもないのに、わざわざ?と不思議に思っていたのです。それがこの製品だったのですね。玉野の海からきれいな海水を汲んできて、自家製はちみつを加え、釜焚きで作った塩と説明されています。甘さはそれほど強くなく、後味にほんのりはちみつの風味が感じられる塩だそう。
その他に、林の熊野神社と福祉作業所と地元アーティストがコラボした手作り石鹸も販売されていました。熊野神社にちなんだアートなイラストのパッケージが目を引きます。カフェ店主さんは書道家という一面も持っておられ、店内をアートの展示に提供するなど、地域の芸術活動にも寄与されているそうです。今年春には「モンカーダこじま芸術祭2019」の会場の一つにもなったとか。え、それって、以前、林の熊野神社も展示会場として参加していたイベントじゃない? と思っていたら、二人組女性の一人(中区住人ではないほうの方)が、「うちのギャラリーもその一環でモンカーダさんの作品展示をしたのよ」と・・・。この方は、岡山市南区泉田の「茶房&ギャラリー 遠音」のオーナーだったのです。
私自身はその芸術祭を見たことはないのですが、熊野神社宮司さんを通して話はよく聞いていました。なんか不思議なご縁・・・。
というわけで、素晴らしい自然を満喫し、ひょんなことから素敵な人たちにも出遭うことができ、大満足の早瀧自然公園訪問でした。なんだか、桃源郷のような別天地にしばし遊んだような気分。さらに帰路は、二人組女性の車に同乗させていただき送ってもらうというオマケまで・・・。皆さん、本当にありがとうございました。
by machiarukinote
| 2019-07-04 16:18
| 街歩きレポート
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