さまざまなご報告 |
7月1日に開催された「ミュゼの史学ゼミナール」と「フェスタde清心温泉」には、どちらにも掛け持ちで参加しましたが、それぞれにお出で下さった皆様、ありがとうございました。遅ればせながら御礼申し上げます。
特にミュゼのほうでは、私が行商のごとく持参した清心温泉グッズを買ってくださった方々もおり、お一人は寄付金まで託してくださいました。その日のうちに、確かに清心温泉復活基金まで届けましたこと、報告いたします。
肝心のゼミナールの内容ですが、このような感じで(→ミュゼのブログ)和気あいあい楽しく語り合えました。今回のお題は「巨石文化」でしたが、岡山県内のおすすめの巨石スポットから、関連の神社や神話伝説、古代吉備文化への想い、信仰の形態の変化、古典怪談など、幅広く興味深い話題が次々に披露されました。
次回は私が進行役を仰せつかりました。8月下旬の開催となる予定。具体的に決まったらまた追ってご案内します。テーマは「民間信仰」で行こうと考えています。民間信仰というと漠然としていますが、平たく言うと「○○に効く神さま」たちのこと。脚、目、歯痛、腰痛、皮膚病、長寿、子宝、性病などなど、ありとあらゆる人の悩みに応えてくれる神様たちが、見回してみると今もけっこう身近に祀られているものです。現代では信仰が廃れていることもしばしばなので、知らずに見過ごされている場合も多いですが・・・。打ち合わせの時に、ミュゼ店長の藤田さんや発起人の石井さんが子供の頃に体験した「拝み屋さん」の話をしてくれて、すごく面白かった! こんな話題もいいですね。現代では迷信と一蹴されてしまいがちですが、昔の人の切実な願いに思いを馳せてみるのもたまにはいいかもしれません。
清心温泉再建の募金運動は、岡山県が豪雨災害に見舞われるという思いがけない出来事が突発したため、現在、実際の活動が充分行えずにいる状況のようです。募金活動の期限は今月29日という設定ですが、この調子では達成できるか微妙な状態になってきました。期限を延長できるといいのですが・・・。
実は、清心温泉再建と共に今私が関心を寄せている復興活動がもう一つあります。『街歩きノオト』第5号で取り上げた常住寺(岡山市中区門田文化町2丁目)のことです。このブログでもたびたび紹介しています(→コレやコレ)。常住寺では復興のためのプロジェクトの一環として、現在「三千仏堂(仮称)建立」という運動を進めておられます。一体につき2万円の志納で高さ20~25cmほどの叩き彫り(円空仏のような作風)の仏像を3,000体造り、境内に簡単なお堂を建てて安置するという計画だそうです。
初めこの話を聞いた時には、常住寺の本堂を修復しなきゃならないのに、そんなことしてていいの?と頭の中がハテナだらけになりました。しかし、プロジェクトの責任者・永宗さん(天台宗岡山教区代表であり、玉島黒崎の本性院住職)のお話を聞いて納得。本堂や山門の修復には億単位のお金が必要なため、簡単にはできません。そのための寄付の返礼品も準備しておられるそうですが、例えば、比叡山延暦寺の霊木を使った数珠は一口50万円だとかで、とても私ら庶民には手が出ない金額。それよりまず、誰もが比較的気軽に楽しく参加できるコトを企画し、気運を高めようというのがこの三千仏堂建立なのだそうです。
神社やお寺の建物修繕や改築では、100万円単位の寄付が寄付者一覧に掲げられていることもザラです。地域の名士や企業などが気前よく出してくれているようですが、それも長年の地縁ゆえなのでしょう。しかし、常住寺は元々岡山城内にあった岡山藩主の祈祷寺であるため檀家がありませんし、由緒のわりには知名度もありません。一般的なお寺や神社のような寄付は望めないのです。そこでまず、世間の注目を引くような面白そうなことをやってみて、そこから大口寄付につなげていくという戦略のようです。急がば回れということですね。
常住寺本堂では、7月13日~16日の4日間、この三千仏堂建立に向けてのイベントとして、仏師による叩き彫ライブ(実演)が開催されました。このイベント中に三千仏の志納(1口2万円)をした人には、その場で自分の分の仏にノミを入れさせてもらえる、ということで、さっそく見に行きました。いくら普通の人でも出しやすい金額とはいっても、2万円はちょっと痛い・・・。でも、思い切って志納しました。常住寺が元気になる一助と思えば・・・。それに、自分が志納した分の仏像には奉納者の名前を表示して安置してくれるそうですし、これとは別に、比叡山延暦寺の霊木で彫ったミニお守り仏も後ほど授与していただけるそう。なんかすごくありがたい感じです。
ざっと形の出来上がった仏像に、仏師さんの指導で目鼻口を彫ります。お顔を彫るといっても、ザックリした作風なので、シンプルな作業なのですが、そこは素人、失敗したらいけない、と緊張しまくり。しかし、そのあと仏師さんがしっかり形を整えて仕上げてくれました。良かった~。
↓ 常住寺本堂に展示されている展示用の「千体仏」
ちょっと叩き彫ライブを覘いて体験させていただくだけのつもりだったのに、仏師さん親子や永宗住職、ご近所の常連さんたちと楽しくおしゃべりなどして、ふと気付いたら、3時間も滞在していました。仏師さんたちは職業柄、文化や歴史に造詣が深く、いろいろ興味深いお話をきかせてくれましたし、清心温泉番頭さんとも知り合いという永宗住職からは、寄付活動の戦略についてのアドバイスも・・・。3人おられた常連さんは皆さんご高齢の方たちですが、この暑い中、護摩堂(元管理人が住んでいた粗末な小屋を改造した建物。清心温泉の「情熱の間」みたいな感じ)に待機して、冷たい麦茶やお弁当でもてなしてくれました。
常住寺の復興活動に関してスゴイなと思うのは、単なる文化財的な復興というだけでなく、立派な地域興しになっているという点です。『街歩きノオト』第5号で常住寺を取材した時(2009年1月)、通りがかった近所のお年寄りが、この地域は細い坂道だらけで車を通しづらいので若い人に敬遠されて高齢化が進み、さびれる一方なのだと嘆いておられました。また、当時荒れ放題だった常住寺も、ホームレスや不良のたまり場にでもなって火を出さなければいいが・・・、と街の不安材料扱いでした。
それが、常住持の復興プロジェクトが始まって以来、ご近所のお年寄りたちが俄然はりきって、境内の整備や掃除、月例の護摩供のお世話などなど、八面六臂で復興に手を貸してくれているのです。この日も、常住寺常連でもある元町内会長さんが、長年の各方面への働き掛けが実って、常住寺付近の道路拡幅の目途がついた、と嬉しそうに話しておられ、現地案内までしてくれました。そんな効果でしょうか、坂の上のほうである常住寺近辺にも新築や工事中の住宅が目立ちます。高齢者と空き家だらけだった坂の住宅地が少しずつ元気になってきているような・・・。それもこれも、それまで少々諦めムードだった地域の方々が張り切って活動し始めたことと関係しているのではないか、と想像しています。
清心温泉も常住寺も、単なる建物の再建や再整備ではなく、地域興し、コミュニティ作りを目指しているところが重要なのです。どちらも成功して欲しいなぁ、と祈っています。
地域興しといえば、吉備真備や金田一ミステリーでおなじみだった真備町が甚大な水害に見舞われたこと、遅ればせながらお見舞い申し上げます。吉備真備好きとしては特に思い入れのある地域であり、2011年に初めて訪問して以来、何度も訪れています。ニュースで流れた真備町の空撮映像で、吉備真備駅前の特徴的な中国風待合所が水没しているのを見付け、愕然としました。倉敷市市役所真備支所まえに建つ吉備真備銅像もきっと頭まで水没したんだろうなぁ。