古代吉備のゆるキャラたち |
しかし、この施設、吉備津神社や吉備津彦神社がある吉備の中山のてっぺんという、えらく不便な所にあるのです。なんでこんな所にあるんだ~!私のような車を運転できない人間にはすこぶる行きにくい。吉備津神社の脇から登っていけば歩いていけないこともないけど(昔、徒歩で、センター近くの中山茶臼山古墳まで行ったことがあるので・・・)、でも、かなり気合が要ります。ということで、チャンスとばかり車で楽をさせてもらいました。
このセンターは本来、研究施設ですが、展示室も併設されていて、一般人がいつでも無料で見学できます。実はここでぜひ見たいものがあったのです。さる10月19日から11月25日まで岡山県立博物館(後楽園外苑)で開催されていた特別展「邪馬台国の時代」で出会ったあるモノたちがそれ。一目見てえらく心動かされ、ぜひとももう一度じっくり見たい!と思っていたのです。県博の特別展は、九州の吉野ケ里遺跡や、大和の唐古・鍵遺跡、纏向遺跡からの出土品も一堂に会するという古代史ファン垂涎の内容で、いつも地味~な県博にしては大盛況だったらしく、私が行った時には図録はすでに売り切れていたほど。
幸い私が心動かされたモノたちは、吉備コーナーの出展品で、岡山にあるものらしい。調べてみると、古代吉備文化財センター所蔵と判りました。センターのHPにもカット的な扱いでこれらの画像やイラストが使われています。が、展示室には常にすべての所蔵品が並んでいるわけではないので、念のため、センターに電話して、今それらが展示されているか問い合わせてみました。すると、県博から返ってきたばかりだからどうかな?と言って展示室まで確認しに行ってくれて、一つはあったけど、もう一つはまだなのですぐに出しておきますね、とのこと。な、なんとご親切に。これはもう職員さんのご厚意に応えて、すぐに見に行くしかありませんね!
古代吉備文化財センターは山の中に忽然とありました。なかなか立派な施設。門のところには「ちょっと見ていきましょうよ」とポップな立て看板が・・・。う~ん、ちょっとと言われてもこの立地ではね~。展示室はこじんまりとはしていますが、充実の内容。山の中であまり知られていないようなのがもったいないくらいです。もちろん目当てもモノたちもちゃんとありましたよ。
まずはこれ。
お次はこれ。
最後はこれ。
これらは、常設展示のレギュラーメンバーのようです。1枚目と2枚目の写真の遺物は、県博の展示では護符とか呪術とかマツリに関するモノ、といったような説明だったと思います。このセンターの職員さんのお話では、1枚目写真の「人形土製品」は、全国的にも他に例のない珍しいもので、それだけに用途も意味するところも全く不明とのことでした。珍しいためか、貸出しや画像使用の依頼がよく来るそう。変わったところでは、キノコの本に使いたいというので画像を貸したこともあるとか。キノコじゃないんですがね~、と職員さんは困った口ぶりながらも、隠れた人気にまんざらじゃない様子でした。
2枚目写真のモノは「分銅型土製品」といって、こちらはあちこちで沢山出るそうです。が、全国の出土品の約4割は岡山に集中しているとのこと。こちらもかなり岡山独自色の強いモノと言えそうです。分銅型土製品についての詳しい解説は、文化財センターHPに出ているので、興味のある方をそちらをご覧ください(→)。
さて、3枚目写真の「人面蛇体土器」ですが、正直なところ、本当に「人面」なのか「蛇体」なのか、何を表現しているのか全く分からず、これはとりあえずの名称なのだそうです。遺物には便宜上何か名前を付けなければならないので、命名はけっこう適当というか、無理やりのことが多いとか。この「人面蛇体?」の上部に見える欠けた画は、鹿と鳥なのだそうです。何でこれだけで判るんですか!と聞くと、鹿や鳥はよく描かれ、パターン化されていて、他の例も沢山あるので判るとのこと。パターン化された鹿や鳥を描いておきながら、こんなぶっ飛んだ蛇人間?を描くなんて、一体どういうヤツなんだ!
岡山独自色の強い古代遺物といえば、「特殊器台・特殊壺」「特殊器台埴輪」や「陶棺」といったあたりが有名どころだと思うのですが、他にもこんな面白いモノたちがいたとは驚きです。古代吉備文化の奥深さをつくづく実感させられました。それにつけても、あまり知られていないようなのが残念。ここはぜひ強力にプッシュして売り出して欲しいものです。キャラクター化して博物館や文化財センターのマスコットにするとか、ミュージアムグッズ作るとか。キノコちゃん(キノコじゃないけど)やフンドーくんのストラップがあったら私欲しいわ~。ヘンにキャラクターデザイン化しなくても、そのままの形状で可愛いよね。
岡山は、県博も文化財センターも超地味でかわいそうです。県博なんて、後楽園の前という観光的に最適の立地なのにアピール度ゼロだからねぇ。地元の一部の古美術・歴史マニア(主に中高年)は来るかもしれないけれど、観光客が見に来るっていうの聞いたことがない。奈良県立橿原考古学研究所附属博物館に行った時 、解説してくれたスタッフに、古代吉備もすごいですよね~、岡山でそういうの見られる博物館ってありますか?と逆に熱く問われ、答えに詰まりました。橿原の博物館の立派さを目の前にしていただけに・・・。その職員さんは、岡山はもっと古代吉備を自慢してアピールしたほうがいいですよ、としきりに熱弁していましたっけ。お金のない岡山県に、もっといい施設作ってとか言えないけれど、せめてストラップ作るくらいの予算出してくれないかなぁ。