帰省先から帰ってきました。 |
いつも東京に行く時はこの機会を逃さず、東京で開催中の展覧会を見たり、気になる史跡を訪ねたり、とついフル回転してしまうのですが、今回は事前にじっくり下調べしている暇がなかったのと、あまりに外が暑いのとで、まあ、いいか・・・と、無理せず小さな(楽な)外出にとどめました。
しかし、それでも東京は快適で気の利いたお出掛け先が豊富です。行く直前、あるいは行ってから見聞きしただけでもこんな面白い所がありました。
まずは、五反田(品川区)の『ルーヴル‐DNPミュージアムラボ』。DNP大日本印刷という企業のショールーム的施設なのですが、パリのルーヴル美術館と提携して、1点~数点の収蔵作品を借り受けて展示し、その作品に関する詳しい解説を映像やタッチパネルなどのマルチメディアを駆使して観覧者に提供する、という本格的な内容です。定員制なので予約が必要なものの、入場はまったくの無料!
現在の展示テーマは古代ギリシア美術。赤絵式の壺や小型のブロンズ像など、ギリシア美術の小品が4点来ていました。小品とはいえ本物ですからね~! ゆっくり鑑賞し、タッチパネル等の機器を自由に使えるよう、定員数はグッと抑えているようで、贅沢なくらい空いた会場内でした。ウンチクの解説も面白く、のんびりと1時間半くらい過ごしました。
開館は2006年だそうです。今回のが第10回目の展示だとか。これまでも、ルネサンス絵画、近代絵画、エジプト美術、イスラム美術など様々なテーマでの展示があったそうです。いやはや、タダで美術三昧、贅沢ハイテク空間。東京の人はいいな~。
次に行ったのは、秋葉原~御徒町(台東区)間のJRガード下にある『2k540(ニーケーゴーヨンマル)AKI-OKA ARTISAN』。ここはJR山手線や京浜東北線の高架が走っており、かなり幅のあるガード下空間があります。従来は倉庫や駐車場ぐらいにしか利用されていなかったこの空間が、再開発により集合店舗施設に生まれ変わったのだそうです。それも、若いモノ作り作家たちの工房兼ショップ専用の・・・。3年くらい前に第一次オープンしていたらしいのですが、今回たまたま噂を聞き、さっそく訪れました。
ガード下の商店街などと言うと何だか狭苦しいイメージですが、行ってみるとロフト風を思わせるアートなお洒落さにビックリ。元々のコンクリートの柱や梁などをそのままむき出しで使い、白を基調としたモノトーンで塗装。高い天井、広い通路。その中に、普通の平屋くらいの高さの小店舗が連なっている・・・。昭和っぽいコンクリート構造物のせいか、モダンなんだけど、どこかレトロさも。
ショップも、革、木工、金属加工、鞄、帽子、アクセサリー、陶器、染物などなど多種多彩で、しかもハイセンス。定期的にワークショップも開催されるそうで、その日は、本場・富山県高岡市から宣伝でやってきた鋳物職人たちが鋳物体験のワークショップをやっていました。土で型をとり、溶かした金属を流し入れて固めるという本格的なもの。参加費2000~3000円で小物が作れるとあって、かなりの人がチャレンジしていました。
JR東日本という“大手企業”の再開発事業なのに、ハードもソフトも手作り感や個性を感じさせる施設になっているのがカッコいい! 古い建造物を上手に利用して活かしているのもいいですよね。
さて、最後に行ったのは、千代田区丸の内の旧東京中央郵便局舎跡にできた『JPタワー/KITTE』という再開発ビル。ビル自体は去年できていたらしいけど、その商業施設部分『KITTE』は今年春にオープンしたばかりだそう。戦前の優れた近代建築として知られていた旧東京中央郵便局舎は、保存か取り壊しかで大揉めに揉めたのが記憶に新しい。当時の総務大臣・鳩山邦夫氏が取り壊しが進む現地を抜き打ち視察し、「トキを焼き鳥にして食っちまうようなもの」と苦言を呈したのが話題になりましたよね。
結局、旧建物の一部というか前面外観が残されることとなり、高層ビルの低層階が昔の姿というような造りの建物になりました。建築の専門家たちは重要文化財として完全保存することを主張していたそうですが、折衷案というか妥協案のような形で開発に押し切られたということらしいです。まあ、首都都心の一等地だからねぇ。
レトロビル的見た目はほぼ外観だげで、中はフツーのピカピカ最新型再開発ビルでした。いろんなお洒落なショップや飲食店がたくさん入っている。罪滅ぼしのつもりなのか、商業施設部分の一画に、当時の内装を再現した「局長室」なる部屋があって、自由に入ることができます。旧局舎の保存部分に当たる建物正面側の一画でもあり、ここからレンガの東京駅駅舎(最近復元工事が完了して創建当時の姿を取り戻した)がバッチリ眺められることもあって、首都東京の“近代化”レトロに浸れるスペースとなっています。
あと、これとは別に、旧局舎保存部分を中心としたかなり広いスペース(2フロア分)がミュージアムになっていて無料で(!)見学できるのには驚きました。『インターメディアテク ~JPタワー学術文化総合ミュージアム~』というのがその名称で、東京大学が全面協力しているそうです。これまで東大内に死蔵(?)されていた開学いらいの学術標本や研究資料を展示しています。動物や鳥類の骨格標本やはく製、昆虫標本、鉱物標本、人体模型や地球儀などの古い道具類、民俗学的・考古学的資料、天体観測写真などなど、分野も数も多岐多数。それらが、クラシックな木製棚などをわざと使ってレトロモダンな雰囲気でカッコよく展示されているのです。どことなく“ヴンダーカンマー”(昔の何でもあり博物館)的テイストもあり・・・。荒俣宏氏とかが悦びそう。
科学博物館などどは違って、お子様がお勉強のために訪れるというより、デザイン化された空間の中で大人が学術遺産をビジュアル的にそぞろ見て楽しむ、といった施設のように見受けられました。あまり時間がなかったので一通りざっとしか観れませんでしたが、何度も通ってじっくり鑑賞していったら面白いかも。なんたってタダですからね!
さすが首都東京は、公共の施設にしても私営の施設にしても、たっぷりお金を注ぎ込んでいろんな知的サービスを提供してくれていて、本当にうらやましいな~と思いました。来る人・利用する人も多いし、お金の注ぎ込み甲斐があるんでしょうね。
ところで、今回の帰省では暑さでボーっとしていてカメラのシャッターを押すのも忘れました。(内部は撮影禁止の所も多かったけど、外観写真とか撮ればよかった・・・。) 写真無しの殺風景なレポートとなってしまい、スミマセン。