またまた奈良③ ~古事記編~ |
が、桜井市安倍~吉備ウォークはまだ続きがあります。真備伝説がらみのスポット訪問は一応前回のレポートで終わりですが、その後ただ最寄り駅を目指すだけではつまらないので、史跡をたどりたどり駅まで歩くことにしました。
御厨子観音まで来れば、天香具山(香久山)はすぐ近くです。というか、御厨子観音や御厨子神社がある丘は、香久山から伸びた尾根の一つという感じらしい。余談ですが、この尾根の東側一帯が、古代史ファン注目の「磐余(いわれ)池」があった所なのだそうです。昨年12月に、その堤とみられる遺構が発見されて話題になりました。磐余池のほとりには用明天皇(聖徳太子の父)が宮殿を築くなど、古代の重要地で、ここを舞台に様々な政争が繰り広げられたことで知られています。
その磐余の地(今は田圃が広がる田園地帯)を左手に見ながら、尾根東麓の小道を進みます。あまりに素朴な田舎道で(舗装もされておらず、だんだん細くなる…)少々不安になり、御厨子観音に一旦戻ってお寺の奥さんに確認してみました。と、その道で大丈夫、ほんの少しの間、寂しい所(藪)を通るが、そこを抜けたらすぐ香久山とのこと。まさにその通りでした。しかし、その先でまたしばしウロウロ。事前に調べた手元の地図と実際の道が違っていて(立ち入り禁止の道だらけ!)、香久山西麓の「天香山神社」にたどり着くのにだいぶ遠回りしてしまいました。妙に豪華な広場(公園?)などはあるんですが、道が…。散策路も整備してくれ~!
天香山神社を訪問する前に、手前の脇道から山の中へ入って、「月の誕生石」という巨石を見て来ました。御厨子神社にあった「月の輪石」と同じく、これも巨石信仰のイワクラと思われます。 ↓ 「月の誕生石」
ところで、香久山の辺りに来た頃から急に晴れてきて、眩しいくらいになってきました。午前中はずっと雨、その後も曇っていて春にしては寒々しい空模様だったのに…。これも太陽神アマテラス様のご神威でしょうか。
さて、山の西麓にある天香山神社に到着しました。鄙びた集落のこじんまりとした神社です。いかにも田舎のお宮という感じ。 ↓ 木漏れ日の「天香山神社」
「天の真名井」とは高天原にあった神聖な泉(井)で、神話では、ここで姉アマテラスと弟スサノオが「ウケイ」という儀式を行います。お互いの持ち物(剣と勾玉)を交換し「天の真名井」の水で清めて口に含み、そこから霊力で神々を生み出すのです。どっちがより立派な神を生み出したか、を競うというもの。ここでスサノオは一方的にオレの勝ち宣言をした上、調子に乗って様々な乱暴狼藉を働いて姉を怒らせ、ついに天の岩戸事件になってしまう…という話はお馴染みですよね。 ↓ 天香山神社境内の「天の真名泉」
もう一つは「波波迦(ははか)の木」。占いに使った木だといいます。天の岩戸神話にも登場。神々は会議をして、岩戸にこもってしまったアマテラスを外に引き出す算段をし、いろいろ準備を整えるのですが、その準備の中にそれは出てきます。香具山に生える「波波迦の木」で、香具山に棲む雄鹿の肩骨を焼いて、その裂け目で神意を占ったというくだり。現地説明板によると、波波迦とはイバラ科のウワミズザクラの古名で、現天皇即位の際の大嘗祭に使うため、ここの波波迦を献上したそうです。 ↓ 天香山神社にある「波波迦の木」
さて、この天香山神社から香久山の中を通って南麓に抜けるというルートもあるのですが、ここまで既にさんざん歩いていたこともあり、山歩きは断念し、舗装された山裾道を歩いて南麗の「天岩戸神社」に向かいました。10分弱で着いたかな。ここもまた、鄙びた田舎の神社。天香山神社よりもっとこじんまりしています。 ↓ 天岩戸神社のご神体
天岩戸神社のご祭神はアマテラス大神。実は、今年2月の奈良旅の時、「フルコト」で店オリジナルの「女神おみくじ」を引いたのですが、出た札はアマテラス様で、お薦め神社はここ天岩戸神社でした。金田さん、新井さん、ちゃんとお薦め神社に行って来たよ~! それに、アニメ映画『わんぱく王子の大蛇退治』DVDのおかげで、天の岩戸神話に思い入れが盛り上がっているところゆえ、二重に和気和気!(←「ワクワク」と読む。金田さん語が感染しました。)
天岩戸神社の近くには、アメノウズメの舞にちなむ「湯笹の杜(もり)」というのもあるらしい。行かねば! ところが、地図を見ながら捜してもさっぱり分からず、同じ一画を3周ぐらいぐるぐる回って、とうとう通り掛かったオジサン(地元民)に聞きました。「ああ、ただの小さな藪だけど…」と前置きして場所を詳しく教えてくれました。「天の岩戸前でアメノウズメが踊った時に手にした笹だよ。今でいうストリップね。」とも。いやー、詳しい人に出会えて良かった!
しかし、「湯笹の杜」は本当に分かりにくい所にある目立たない藪でした。教えてもらわなかったら絶対わからなかったと思う。道に表示とか全く出ていないし。 ↓ 「湯笹の杜」
※追記:「四方竹」という中国原産の竹だそうです。秋に出る細い筍は珍味だとか。
古事記で歩く天香具山ミニウォークは、ここでひとまず終了です。あとはひたすら近鉄の駅に向かって西に進むのみ。神話の地といっても、神秘感だの幽玄さとかは全くなく、ひたすらフツーの田舎でしたが、参道わきに花が咲き乱れていたりして、この牧歌的のんびり感もまたいい感じ。古代の空気を満喫しました。